サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
十九時を少し回った頃。
出発ロビーの制限区域内を巡回していると、搭乗待ちの子供がぐずって泣いている。
この時間の搭乗予定の幼児連れは、夕食を早めに摂ったり、摂ろうと思って早めに空港に来たのにも関わらず、飲食店が混んでいて中々座れず、搭乗時間に追われて食べ損ねることも多い。
ターミナル内のショップや自動販売機で軽食やお菓子を買って、子供の空腹と機嫌が直るならまだいい方。
年齢的に、『空港でお子様ランチを食べる』と約束したファミリーは、最悪搭乗してもぐずりっぱなしのこともよくある。
そんな時に役立つのが……。
「ぼく~?おじさんがてじなしようか?」
泣きじゃくる子供を抱っこしている母親に会釈し、予めジャケットのポケットから掴み出したものを手の中に隠して。
「おじさんがね?みっつかぞえると、おもちゃがでてくるよ~?」
突然話掛けて来た怪しいおじさん(俺)を不思議そうに見てる子供に向かって、玩具が入って無い方の手を子供の顔の前に。
「いーち、に~い、さ~~~んっ!」
パチンッと指を鳴らし、驚いて目を瞑った瞬間、もう片方の手を開いて玩具を見せる。
「わぁ~!ひこうきだぁ~~」
「あげるよ、はい、どうぞ」
「ありがとう~」
「すみません、有難うございます」
「いえ、素敵な旅を」
子供にプレゼントしたのは、過去に取り扱ったノベルティーの品。
現在使用しているノベルティーをプレゼントすることも可能だが、搭乗すればCAから無料で配布される。
同じものをプレゼントしても意味がないし、倉庫に眠る廃棄処分の在庫を整理するにも一役買えるため、こうしてジャケットのポケットには常に幾つかのノベルティーを忍ばせている。