サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
「バゲージ付近か到着ロビーにご家族の方がいる可能性が高いな」
「はい。配偶者の方か、息子さんや娘さんとかがいらっしゃるといいんですけど」
「大至急確認する」
「お願いします」
スタッフ総出でご家族の方を探すと、到着ロビーに息子さん夫婦が迎えに来ていた。
元々持病は無く、普段も高血圧ではないらしい。
久しぶりに帰国したとあって、緊張していたようだ。
息子さん夫婦の顔を見たら顔色も少しずつ良くなり、クリニック内で点滴処置することになった。
***
二十三時十五分。
パソコンの時計表示が視界に入り、無意識に手が止まる。
今日はいつもより目が重い感じがした。
「帰るか」
パソコンの電源を落とし、退社準備をする。
日中よりだいぶ人気の少なくなった廊下を進み、すれ違う社員に軽く会釈し、駐車場へと向かおうとした、その時。
目の奥が鋭く痛み、視界が微睡むように歪み、光を失うかのように確実に見えない箇所が出来たように感じた。
ふらつく体、早まる鼓動。
閉じた瞼を押し上げた時、何も見えなかったらどうしようという不安に駆られた。
「大丈夫ですかっ?!」
聞き覚えのある声。
駆け寄る足音。
ふらつく体を支えるために壁に手をついた俺の背中に添えられる手。
「財前さんっ、ご気分でも悪いんですか?」
「………大丈夫です」
乱れる呼吸を必死に整え、ゆっくりと瞼を押し上げた。
………見える。
まだ、大丈夫そうだ。
「疲れが溜まってふらついただけだ」
「……ご無理をなさるからですよ」
足下から視線を上げると、自然と彼女と視線が絡まった。
その瞳があまりにも澄んでいて、俺の目の中まで見透かしそうで…。
「俺に構うなッ」