サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
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社屋内で目の異常を感じたあの夜。
俺は弱みを握られたくなくて逃走した。
顔色や表情を見れば、具合が悪いことくらい分かるだろうが。
さすがに眼病までは分からないはず。
胸部外科医だと記憶にあるから、専門外の病まであの一瞬で分かるとは思えない。
けれど、眼病がどうのこうのではない。
経営者の一人として、弱みを握られるわけにはいかない。
それでなくても、近い将来、今のこの立場を追われるだろうから。
それまでは少なくとも、出来るだけ伏せておきたくて。
日本最大手の航空会社という立場上、後継者争いがあるのも当然で。
腹違い(父親の愛人の息子)の弟が、俺のこの座を狙っている。
小説やドラマであるような泥沼の後継者争いは起きていないが、飄々と狙っているのは確かだ。
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環医師を振り切り帰宅した、翌朝。
視界は鮮明に見えるものの目が疲れているのか、重く感じた。
重要な会議がないこともあり、仕事を休んで受診したら、炎症していると診断された。
その治療も兼ねて入院し、詳しく調べるために検査をすることにした。
幸いにも癌化はしていないらしいが、かなり眼圧が高くなっていると判明した。
放置すれば視神経を圧迫し、やがて緑内障を発症し、失明する恐れもある。
腫瘍が原因で別の病を引き起こしかねない。
四年前に生き地獄に突き落とされのに、更なる深みへと引きずり込まれている気がする。
もう何もかも捨てて、楽になりたいと心が叫ぶ。
けれど、それを許されるような環境ではない。