サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)

四日ぶりに出勤したら、膨大な書類がデスクの上に置かれていた。
決裁待ちの書類だ。
たった四日なのに、この量だ。
長期療養など出来るはずもない。

唯一俺の眼病のことを知っている秘書の酒井が、心配そうに声を掛けて来る。
父親からサポートするように言われたようだ。

主治医から両親に情報が筒抜けだったらしい。

午前中は書類を処理して、昼過ぎから巡回も兼ねてあちこちの確認をしていた、その時、突然大声で呼ばれた。

混雑するターミナル内で、好奇の目に晒される。

俺を呼び止めたのは環医師。
駆け寄るや否や人の手を掴み、すぐさま脈拍を取り始めた。

数日前の出来事が過る。
触れて欲しくない部分を抉じ開けられそうで。

俺は人目も憚らず、彼女の腕を掴み返した。

「ちょっと」
「え?」
「酒井、悪い。先に行っててくれ」
「……はい」

俺は彼女の腕を掴んだまま、立ち入り禁止区域へと。

人気の無さそうな配電室横の死角の壁へ、彼女を押し付けた。

「どういうつもりだ」
「……どういうって……心配だからに決まってるじゃないですかっ」
「いつ、心配してくれと頼んだ?」
「……頼まれてはいないですけどっ、医師として……」
「余計なお世話だ」
「っ……そんなこと、言われなくても分かってますッ」

苛立つ感情を彼女に向けていることは自覚している。
けれど、本部長という職に就いている以上、自分の肩に数万人の生活がかかっている。
決して、弱みを握られては……。

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