サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)

「毎日世話して、嫌にならないか?」
「え?…………はい」
「……そうか」

突然話し掛けられた。
てっきり、寝てるとばかり思ってたのに。

世話というより、診察と医療行為だけどね。
まぁ、彼からしたら『世話』の部類に入るのかも。

「私も質問していいですか?」
「……ん」
「専門外なので間違ってるかもしれませんが、もしかして、眼の病なのでは?」
「………」

彼の診察をするようになって、思い当たる節が幾つかある。

空港内で見かけた時に何度か目を細めていたし、顔を傾けることもあった。
それに、こうして自宅にいる時や車内ではよく目元を押さえたり、こめかみを揉み解しているし。
ただ単に目が疲れているだけならまだしも、耳下腺や顎下腺が腫れるのは特定の疾患の症状だ。

ここ数日の腫れが気になり、今日は非番だったから日中に書店で医学書を幾つか購入して来た。
医師として知っているのと知らないのとでは大違いだから。

彼は黙ったまま、寝てしまったのか。
それとも、答えたくないのか。
無理に聞くのも失礼だし、もう少し様子を見て判断しようかな。

温湿布のタオルを交換するため、キッチンへと。
温めたタオルを適温にする。

「目元のタオルを交換しますね」

ゆっくりと外し、温めたタオルを乗せようとした、その時。
彼の瞼が開き、タオルを持つ私の手を彼が掴んだ。

「何故、……眼病だと?」

彼の視線があまりにも刺々しくて、ここ最近は見なくなっていた一カ月前の時と同じ目をしている。

「瞼の腫れ、耳下腺と顎下腺の腫れ。それと涙も多いのでは?早朝の診察時、目元に涙が沢山溜まってる状態でしたし」

< 51 / 142 >

この作品をシェア

pagetop