サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
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『専門外なので間違ってるかもしれませんが、もしかして、眼の病なのでは?』
とうとうバレてしまったようだ。
毎日顔を突き合わせていればいずれ気づくことも予想していたが、たった一カ月で。
専門外のはずなのに、何故分かったのだろう。
「瞼の腫れ、耳下腺と顎下腺の腫れ。それと涙も多いのでは?早朝の診察時、目元に涙が沢山溜まってる状態でしたし」
僅かな腫れで見破ったのか?
「決定打と言ったら何ですけど、目を細めたり顔を傾けたり、目元を押さえたりこめかみを揉み解したりする光景をよく目にします。なので、眼の病かな?と思って。今日は非番だったので書店で医学書を買って来ました。そこに書かれている症状とよく似ていたので」
「…………フフッ」
「違いましたか?まぁ、専門医ではないので、診断は出来ないですけど」
「合ってる」
「へ?」
「合ってるよ、……その見立てで」
俺の完敗だな。
言い当てられては言い訳すら出来ない。
嘘を吐くことが嫌いな俺にとって、彼女の言葉は『死の宣告』をされたようなもの。
主治医に診断された時にも味わった、この感情を再び味わうとは……。
「眼窩腫瘍だ」
「……良性ですか?」
「今のところは」
「はぁ……安心しました。どうなのかな?と気になって」
「さすが、医者だな」
「有難うございます。一応、これでも医大を首席で卒業してますから」
「えっ」
「本当です。調べて貰ったら分かると思いますよ」
にこっと笑ったその笑顔は、自分が病人だということを一瞬忘れさせてくれるほどの明るい笑顔だった。