サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
自分と正反対の人こそ、人生の秘薬

環医師に持病を知られて数日が経ったある日。
搭乗券を紛失した親子の対応をしていると、視界の奥からこちらの方へ歩いてくる人物に視線が留まった。

すっかり遠くからでも見分けがつくほど、脳内にインプットされているらしい。
……環医師を。

歩き方、容姿、醸し出す雰囲気?
別に俺の元に歩いて来ているわけではなくて、京急線からクリニック横に出るためのエレベーターに向かっているだけなのに。
チェックインカウンター横を通り過ぎるその姿を無意識に視線で追ってしまっていた。

「本部長」
「あ、すまない」

搭乗券がなくても、予約したクレジットカードから再発行可能だし、QRコード(eチケット)の読み取りが出来れば可能だから、スマートフォンにアプリがインストールされているか確認する。

「読み取り出来ました」
「入住完成(訳:チェックイン完了です)」
「謝謝你(訳:ありがとうございます)」
「別客氣(訳:どういたしまして)旅行愉快(訳:良い旅を)」

台湾からの旅行で来日した方の通訳をする。
帰国する予定で空港に来たが、搭乗券を紛失していることに気付いたそうだ。
別のカウンターで香港からの団体客の帰国の手続きに話せるスタッフが数名取れられしまい、仕方なく対応に追われた。

そんな俺らの横を横切る環医師に何人かの男性職員が挨拶をしている。
初めて見る光景ではないが、以前と感じるものが違う気がした。

俺が彼女と親しくなったからか?
親しいというと語弊があるかもしれないが、診察を受けるようになる前とは確実に違う感じがした。

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