サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
デレッと眉根を下げ、へらへらっとした笑みを浮かべながら、勤務中にも関わらず環医師に手を振る男性職員。
当然、彼女も手を振り返すし、笑顔で挨拶するのだが。
あの笑顔は誰にでもしてるよな?
俺と二人きりの時も見たことがある。
だが、医療行為をしている時の彼女は常に真剣そのものだし、臨機応変の対応力は他の医師と比べ物にならない。
第一ターミナル(国内線)のクリニックにも女医はいるが、雲泥の差だ。
「本部長、ありがとうございました」
「酒井、巡回に行くぞ」
「はい」
チェックインカウンターでの対応を終えた俺と酒井は保安検査場をくぐり、制限区域内の巡回へ向かった。
***
搭乗口を一つ一つ確認しながら、すぐ後ろを歩く酒井に声を掛ける。
「あの医師の弱点って何だと思う?」
「……さぁ、何でしょうね」
分かってても口にするような男じゃないことくらい分かってる。
だけど、気になって仕方ない。
俺だけ弱みを握られていて、あの医師の闇の部分を知らないということが、どうにもこうにも解せない。
常にフェアか、優位であり続けたい俺にとって、今置かれている状況は至って俺がレッドゾーンで、あの医師はセーフティーゾーンにいるということだ。
一緒にいる時間が増えれば、何か掴めるだろうか?
あの医師が病巣を見抜いたように。
「今日は遅番だったか?」
「はい」
遅番の時は帰宅時に診察及び処置を行う予定だが……。