サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)

環医師が遅番の日は駐車場で診療をした上で、点滴が必要であれば処置をしてから俺の車で帰宅するのがルーティン化している。
だから、こうして珍しく病院に姿を現したことで驚かせてしまったようだ。

「診察だけでいい、今日は点滴は必要ない。その代わり、この後に少し時間を貰いたいんだが」
「………はい、それは構いませんが」

ジャケットを脱ぎ、横にあるかごにジャケットを置き、いつも通りにネクタイを緩めて……。
彼女は薬剤の入った箱を診察用のデスクの上に置き、聴診器を手にして椅子に腰を下ろした。

血圧や脈拍、心音や咽頭の状態を確認していつも通りの診察が行われる。
そして、少し前に大量に手渡したASJの三色ボールペンを使用して診療記録をつける。

「痛い所や違和感のある所は?」
「ない」
「眼も?」
「………今は大丈夫だ」
「夕方に点眼薬しました?」
「した」
「夕食後の服薬も?」
「飲んだ」

いつもながらに事務的な会話。
ジョークすらない。
お互い様なのだろうが、変に詮索しないで済むから俺的には助かっている。

「少しだけ、待ってて貰えますか?」
「それは構わないが」
「薬剤の補充があと少しだけ残ってて、それ終わりにしたら上がれます」
「ん」

彼女は院内奥へと駆けて行った。
すると、奥からブツブツ呟く声が漏れて来る。
気になって院内奥へと行くと、ミニ脚立を使って薬剤を補充していた。

院内処方のため、狭い空間に大量の薬品が陳列している。
その棚の上の方に白い箱を並べていた、その時。

「あっ……」

ほんの少しバランスを崩した彼女を背後から支え、手から落ちそうな箱を守るように彼女の手を支えた。

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