サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
二十四時間稼働している羽田空港の管制塔は、常に人がいる。
国土交通省管轄の為、ここに入れるのは国家公務員のみ。
塔の管制室に辿り着くまでには幾つものチェックポイントが設けられており、その都度暗証番号が必要。
しかも、この暗証番号は毎週のように変更される。
塔下の入口からスマホで連絡を入れると、程なくして担当者が迎えに来た。
「お忙しい所、すみません」
「いえ、大丈夫ですよ。珍しいですね、財前さんが女性のエスコートするなんて」
「冗談は止めて下さい」
「こんばんは。初めまして、第三の空港病院の医師、環です」
「え、お医者さんっ?!」
「……はい」
「財前さんも隅におけないですね~」
話し上手の主任管制官の寺脇 守、四十二歳。
俺が操縦士をしていた頃からの知り合いだ。
地上百十五.七メートルのランドマーク。
世界三番目の高さだ。
暗証番号を教わることが出来ないため、こうして地上まで迎えに来て貰い、管制室まで連れて行って貰う。
「この中が管制室になります。通信中は会話をお控え下さいね」
「はいっ」
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ」
「そんなこと言われても無理ですって」
何重にも掛けられているチェックポイントを通過する度に、彼女の表情が強張って行くのがよく分かる。
まぁ、一般人なのだから、これが普通の感覚だよな。
俺は何度もこの場所を訪れているし、操縦士として何百回も管制室とのやり取りをしているから、古巣?みたいな懐かしい感じしかないけど。
彼女からしたら、夢にみた場所なのだろう。