サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
話を聞くと、三年前までは副操縦士をしていたらしい。
だから、完璧に理解出来てたんだ。
本部長としての仕事ぶりだけでも尊敬出来るほど真面目な人なのに、操縦も出来るだなんて。
眉目秀麗、頭脳明晰、仕事も出来て、お金持ち。
他の人が手に入れたくても手の届かないようなハイスペックを全て持ち合わせてるような人だけど。
唯一『眼病』という点が、彼の人生を百八十度変えてしまったようだ。
彼のご家族がよく利用するというお店で夜食とも言える夕食を摂りながら、話を聞くと。
幼い頃から飛行機を見て育った彼は、機長になるのが夢で操縦士を目指したそうだ。
ゆくゆくは家業を継ぐことも承知の上で、航空大学校を首席で卒業したらしい。
そして、夢だった操縦士として華の二十代を過ごしていたと。
そんなある日、眼の違和感を覚え検査したところ、病気が発覚したらしい。
話している時の彼の瞳は本当に悲しそうで。
聞いてる私の胸が痛くなるほどだった。
***
「ご馳走様でした」
「どう致しまして」
お店を出た私たちは、駐車場へと歩き出した、その時。
「変な話聞かせて悪かったな」
「っ?!」
突然、隣を歩く彼の手が頭に乗せられ、優しく髪を撫でられた。
それも、聞いたことのないほどの優しい声音で。
「よく頑張ってると思うよ」
「え?」
「若い女性が一人で遅番したり、俺みたいな奴のしなくてもいい診察を請け負ったり」
「……それは」
「あまり無理するな?俺みたいに体壊すぞ?」
「………」
何て言い返したらいいのか分からず、噤んでしまった。
仕事では見せない、彼の本当の優しさなんだと思う。
私は思わず……。