サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
「財前さんこそ、頑張り過ぎですっ。仕事のし過ぎですっ!他の所も体が悲鳴上げますよっ……」
彼を抱き締めていた。
おかしなことをしているのは分かってる。
だけど、優しくされればされるほど、彼の心が悲鳴を上げてるように聞こえて。
今まで誰にも弱音を吐けなかったはずだから。
秘密にしていた傷を抉って知ってしまった以上、放っておけなかった。
だって、私なんかよりずっと傷が深くて重症なんだもん。
「私ならいつでも話を聞くことくらい出来ますからっ。忘れるだけが最善の方法ではないはずです。楽しかった日々を思い出として、胸にしまっておくことも出来ますし、治る可能性が一%でもあるなら、その方法を一緒になって探します!人生はまだまだ長いですから」
「………悪いっ」
「……大丈夫ですよ。ここなら暗いから、誰にも見られません」
私の肩に額を乗せた彼の肩がほんの少し震えてる気がした。
そんな彼を目一杯抱き締め、優しく背中を摩る。
誰にだって隠したい想いがある。
彼よりはちっちゃな悩みだけど、私にだってあるから。
こんな風に誰かに寄りかかることも時には必要で。
暫く摩っていた私は、空を見上げて呟いた。
「私に眼は治せないですけど、辛い時に、やけ酒に付き合うくらいなら出来ますから、いつでも呼んで下さいっ!これでもお酒は強い方です」
重い空気から彼が顔を上げやすくするため、話題をほんの少し変えてみた。
すると、ゆっくりと顔を持ち上げた彼は、目は潤んでるものの表情は意外にも明るかった。
「じゃあ、次は酒でも奢るか」
「やったぁ~!約束ですよ?」
「ん」
作戦成功らしい。
彼の長い腕に抱き締め返された。
照れ隠しなのかもしれないけど、彼との距離がだいぶ近くなったように感じた。