サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
財前さんの診察をするようになって一カ月ほどが経つけど、この手の話題を聞いたことがない。
私が聞かなかったというのもあるけど、そりゃあそうだよね。
あれほどのイケメンだもの。
世の女性が放っておくはずが無い。
「環先生っ、すみません!四階レストラン街でアナフィラキシー症状の方一名」
「了解、直ぐ行く」
応急用の鞄を手にして看護師の恩田さんとクリニックを飛び出した。
***
第三ターミナル四階の飲食店内において、食事中にショック症状に陥った二十代男性。
同席していた恋人が店舗スタッフに異常を知らせた。
「医師の環です!声が聞こえますか~?」
床に横たわる男性のバイタルを確認しながら、
「恩田さん、搬送の手配を」
「はい」
膝を立て片腕を巻き込むようにして側臥位にし、口腔内の異物を取り出す。
「普段からアレルギーがある人ですか?」
「いいえ、聞いたことがないですっ」
「店長さん、すみません。提供された料理の内容を教えて貰えますか?」
「あ、はい!宮下さーんっ、ちょっと来てー!」
店長と名札が付いてる男性スタッフに声を掛け、原因を探す手伝いをお願いしつつ、私は男性の大腿部外側にアドレナリンの筋肉注射をする。
気道を確保したことで呼吸が再開した男性を仰臥位にし、足の下に丸めた毛布を置き足の高さを三十センチほど高くした。
「私の声が聞こえますか~?ここがどこだか分かりますか~?」
眼球が動いているものの、意識が朦朧としている状態。
応答がなく、手足もだらりとしている。
「すみません、声を掛けてて貰えますか?」
「あ、はいっ。純くん、聞こえる?私が見える?……」
恋人の女性に声掛けしてて貰ってる間にバイタルをメモしていると、女性スタッフが料理に使われた食材が書かれた紙を持って来た。