サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
「とりあえず、こっちに座って」
「…………はい」
懺悔状態の私の腕を取り、彼の横に座らされる。
そんな些細な優しさでさえ、分不相応な気がして来た。
言葉では素っ気なく言うけれど、いつだって優しさが込められている。
今だって、床に膝つき状態を止めるようにしたもの。
暫くの沈黙を破るように、彼が口を開いた。
「とりあえず、このまま婚約するってのも悪くない」
「…………え?」
「不要な見合い話は浮上しなくなるし、後継者争いしている異母兄弟に牽制する意味でも有効だし、本部長室での診察もし易くなるし、遅番時に車内治療するのも休日にこうしてここに通うのを知られても言い訳が通用するし」
「………」
見たこともないような不敵な笑み……ううん、それを通り越して、物凄~く悪い顔してる。
「フィアンセだと言ったのはお前だぞ」
「………そうですけど」
「俺がフィアンセで不服か?」
「………滅相もありませんっ」
何だろう。
この、とてつもなく………罠にかかった獲物のような感じは。
「会社の方は好きに言わせておけ。そのうち静かになるだろう」
「………はい」
「両親の方は、………近いうちに食事くらいはお願い出来るか?」
「あ、はいっ!それはもちろん大丈夫ですっ」
「フッ」
「何か、おかしいですか?」
「いや」
「怪し~いです。何か企んでます?」
「俺じゃなくて、……母親が、かな」
「え?」
「そんな事より、俺を『男』として意識出来るか?」
「え?……どういう意味ですか?」
「父親はともかくとして、母親の目は誤魔化せないと思う」
「………なるほど」