サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
間近で見るのも毒というもの。
イケメン相手にする時は、一定の距離を保ちつつ、視線も合わせないのが基本中の基本。
診察の準備をしようと、席を立った、その時。
「ッ?!」
彼に腕を引き寄せられ、彼の膝の上に座らされた。
そして、後頭部をがっちりホールドされ逃げ場を失った私の耳元に……。
「郁だ」
ぞくっと背中に何かが走ったような。
甘美な刺激とでもいうのか分からないけど、彼の囁きは危険な香りを纏っている。
「か……お、る……さん」
「ん」
「郁さん郁さん郁さんっ、郁さん……呼び慣れないとボロが出そうですねっ」
「フッ」
空港内は『財前さん』でも通用しそうだけど、さすがにご両親前にして『財前さん』はヤバい。
普段から口にしてないと、完全にアウトだ。
彼の膝の上からそっと降りると、彼が不意に私の手を掴んだ。
そして、指先を凝視している。
「八号?……七号くらいか?」
「へ?」
「指のサイズ」
「どの、………指?」
分かり切ってる。
薬指のサイズを聞いてることくらい。
でも、フィアンセのふりなのに、指輪が必要なの……?
「………七号です」
彼は言葉でなく、指先で伝えて来た。
『ここ』のサイズは?……と。
「何だか、何から何まですみません……」
「誰が買うって言った?……請求するけど」
「えっ?」
「フフッ、………冗談」
いっそのこと、フィアンセだという設定も冗談として流して下さい……。
そんなことを切に願っていると、彼の大きな手が頭の上に乗せられた。
「俺が用意しなきゃ、母親が超どデカいダイヤが付いてる指輪を用意しそうだから」
「えっ……マジですか」
「……ん」
怖い、怖すぎる。