サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
「彩葉はさぁ、猪突猛進というか、ポジティブ思考で全力投球なのが長所だから、お前の相手は冷静沈着で包容力のある大人の男がいいぞ」
「………」
「少しくらい羽目を外しても、笑って受け流してくれるような、……そういう男」
先輩はオブラートに包まない分、ダイレクトに心に伝わって来る。
後輩として、友人として、大事にしてくれてることも。
元彼と別れた時だって、一晩中付き合ってくれた。
だから、先輩の言葉はいつだって全幅の信頼を寄せているんだ。
「失恋の痛みは新しい恋で上書きするのが一番だぞ」
「……分かってます」
「恋愛はこりごりだ~とか自分に言い聞かせても、好きな気持ちは思ってる方向じゃない所に暴走するなんてことよくあるし。何より、密室状態に閉め切った部屋でさえ、鍵さえあれば簡単に開くもんだ」
「………」
さすが、恋愛のプロだ。
説明が分かり易い。
ってか、医師としてだけでも尊敬なのに、恋愛する暇があることがホント尊敬の域を遥かに超えてる。
「それと」
「……ん?」
「もう少しメイクにも気を遣え」
「………」
「グロスの色を変えるとか、マスカラくらいはしたって減るもんじゃないだろ」
「むむむっ」
「素が可愛いのに、勿体なさすぎ。もっと男心を知る努力をしろ」
「………」
「服だって、休みの日くらいはスカートを穿いたって罰は当たらねぇぞ」
「……分かってますよ」
「三十代の男を相手にするなら、それなりの努力をしないと逃げられるって言ってんの」
痛いところをついてくる。
空港内を走り回る日々のせいですっかりスカート離れしてしまったし、暫く恋愛は封印したくて、わざと化粧も手抜きにしてた。
恋愛かぁ………。