サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
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「こちらに幾つかお出し致しましたが、店内にお気に召した物があれば、遠慮なく仰って下さい」
目の毒よ。
大粒ダイヤが鎮座してるってだけでも引いちゃうくらいなのに。
その両脇にあしらわれてるダイヤでさえ、十分大粒なんだもん。
しかも、プラチナだと確認しなくても分かるし。
私が無言で眺めてるものだから、ほらまた違う商品を探しに行ったよ。
どれも素敵すぎて選べないだけなのに……。
「気に入ったのがないか?」
「え?あ、……いえ。十分すぎます。というより、こんな高い指輪、受け取れませんっ」
「高いか?」
「高いですっ!!」
「フフッ……」
「車が買えちゃいますっ、それも結構な高級車が」
「……そういう考え方も出来なくもないな」
「勿体なくてつけれないですし、つけたら返品出来ないですよ?」
「フッ、返品なんてしないから安心しろ」
腕組して、店員と私のやり取りをじっと眺めていた彼。
既に二十分くらいが経過し、すっかり疲れた様子。
時折、腕時計で時間を確認してる。
「手」
「……はい?」
ダイヤの輝きに魅了されている私の左手を取った彼は、店員が用意した指輪を指に嵌めた。
「うーん、いまいちだな」
何がいまいちなのかすら分からないけど、少し骨ばった節高の指が触れるだけで十分。
次々と嵌めては外し、フィット感なのか、指との相性なのか分からないけど。
店員に細かく指示を出し、試着を繰り返している。
ニ十個ほど試着し、彼が漸く顔を立てに振った。
「どうだ?」
「…………素敵ですっ」
「じゃあ、これ下さい」
「えっ?!」
入店して三十分も経ってないのに、私の給料の半年分くらいの指輪を即決購入って……。