隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 恐らくアルベティーナの顔は、額まで真っ赤に染め上がっていたに違いない。顔中に熱がたまっていく感覚があったからだ。
 ルドルフは手を離すことなく、憂いを孕んだ目で彼女を見つめていた。アルベティーナもルドルフから目を離せない。彼の形の良い唇が、ゆっくりと動く。
「わかった……。お前がそこまで思い詰めているのであれば、俺がお前をもらう。まあ、あいつがお前に惚れているのは事実だからな。あいつからお前を奪うと考えれば、それはそれで面白いのかもしれない」
 くくっとルドルフは笑った。つまり彼は、シーグルードが好きな女性を奪うことに優越感を抱いているのだ。
「お前。三日後は遅番だよな」
「はい」
 ルドルフは団員一人一人のシフトまで覚えているのだろうか。警備隊だけでも何百人もいるのに、その一人一人の勤務状況を覚えているとは、さすがとしか言いようがない。
「仕事の後、お前の気持ちが変わらなければこの部屋へ来い。セヴェリには俺から急な任務が入ったとか、適当なことを言って誤魔化してやる」
 アルベティーナは軽く頭を振ってから、視線を逸らした。自ら望んでルドルフに頼んだことであるのに、逆に彼から口にされてしまうと、なんて馬鹿げたことを言ってしまったのだろうという思いが込み上げてくるのだ。それでも、シーグルードの婚約者になりたくない、彼と結婚したくないという気持ちは揺るがない。
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