隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「そうか」
 ルドルフの匂いが近づいてきた。
「後悔は、しないな」
「しませ……」
 最後の言葉は、ルドルフによって飲み込まれた。アルベティーナの唇が、ルドルフの唇によって覆われてしまったからだ。
 彼とこのように唇を合わせるのは、あの夜以来のこと。だけどあのときは、怪しい薬のせいで、自分でありながら自分ではなかった。今、アルベティーナの意識ははっきりとしている。だから彼を受け入れるのは自分の意志。ガウンの裾を掴んでいる両手に、つい力が入る。
 恐らくルドルフには気付かれてしまったのだろう。口づけをしながらも、ふっと鼻で笑っている。
 彼は閉じ切ったアルベティーナの唇をこじ開けるかのように、唇を食み始めた。
「ふぁっ……」
 息苦しくなり、言葉と共に唇を薄く開けた瞬間、ルドルフの舌が口腔内を舐めとった。奥に縮こまっていたアルベティーナの舌は、ルドルフによって絡めとられてしまう。
「んっ……。はぁ……」
 深い口づけが、こんなに気持ちいいものとは知らなかった。アルベティーナの口腔内で暴れ回っているルドルフの舌が、感じるところを繊細に攻め立ててくるのだ。ぴくっと、アルベティーナは肩を震わせる。
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