隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「大丈夫か? 私の子が宿っているかもしれないのだから、気をつけなさい」
 アルベティーナはシーグルードの腕の中で彼の顔を見上げた。昨日のことを考えると、彼の言っていることは正しい。避妊薬を飲まなかった。つまり、避妊をしなかった。
「シーグルード様……」
 アルベティーナが声をあげたのは、その身体がふわりと浮いたからだ。シーグルードはアルベティーナの身体を抱きかかえると、彼女をソファの方へと連れていく。ソファも白が基調としてあるデザインで、細かな花柄の刺繍が施されている。そのソファの上におろされるのかと思いきや、彼女がおろされたのはシーグルードの膝の上だった。
「シーグルード様……。私、一人で座ることができますから」
「私が君と触れていたいのだよ。それに、君に名前を呼ばれるのは心地よい」
 シーグルードは食事のワゴンに手を伸ばし、それを引き寄せる。
「ティナは、これが好きだったよね」
 シーグルードが手にしたのは、ポタージュだ。アルベティーナがポタージュを好きであることは事実であるが、なぜシーグルードがそれを知っているのかがわからない。
「あっ、シーグルード様、……んぐっ」
 アルベティーナの言葉を遮るかのように、シーグルードは彼女の口の中にスプーンを押し込んだ。
「美味しいかい?」
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