隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「好きな女性が側にいるのに、その、抱くことができないというのは、拷問というか、なんというか……」
「冗談です」
「では、私は君を抱いてもいいのだろうか」
 シーグルードがアルベティーナの首元に顔を埋めた。すんすんと匂いを嗅がれているような気がする。
「ですが、シーグルード様。私、騎士団の仕事は続けたいのです」
「そ、それは……」
 じぃっとアルベティーナが彼を見つめると、彼は誤魔化すように視線を逸らす。
「シーグルード様が私を女性騎士にと抜擢してくださったのですよね」
「そうだ。二年前、君がプレヴィール子爵に喰らわせた回し蹴りは見事なものだった」
「やはり、見ていたのですか?」
「ああ。少し離れた場所からな」
 アルベティーナを抱く腕に力が込められた。
「君だけを警備隊に配属したのは、例の潜入調査には君の力が必要であったのと。早かれ遅かれ君を私のものにするつもりだったからだよ。君には悪いが、警備隊は君がいなくても成り立つ」
 ガツンと頭を殴られたような衝撃が、アルベティーナを襲った。ようするに、騎士団にアルベティーナは不要であると、そう言われているのだ。
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