隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「お顔が真っ赤です」
 どうやらその言葉がとどめを刺したらしい。シーグルードは右手で顔を抑えると、観念したように口を開く。
「君を、他の男に会わせたくない」
「ですが。セヴェリお兄さまは、私の兄ですよ。家族です」
「それは……。いや、まだ言えない。だけど、セヴェリには会わせることはできない。彼は、君が警備隊に残ることを望んでいるからな。変に説得されても困る」
「でしたら、エルッキお兄さまと会わせてください。エルッキお兄さまは殿下の護衛ですよね。エルッキお兄さまでしたら、いいですか?」
「それもできない」
「どうしてですか」
「だから君を、他の男に会わせたくない。特にヘドマン家の男には」
「ですから、エルッキお兄さまもセヴェリお兄さまも、私の家族です」
「家族、ね……」
 そう呟くシーグルードはどこか切なそうに見えた。
「ああ、そうだ。ティナ。君には、私の両親に会ってもらいたい。朝食も済んだことだし、着替えようか」
 突然シーグルードは話題を変えた。家族にさえ会えないような状況に不安を隠せないアルベティーナではあるが、これ以上彼がこの件について口にしてくれないのであれば、必要な情報は得られないだろう。
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