隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「クリスティン。君は孤児とは思えない程、しっかりと教養が身についているようだな」
「旦那様のおかげです。このようなわたくしに家庭教師を手配してくれました。旦那様がおっしゃるには『どこに出してもおかしくない淑女に育てたつもりだが』だそうですが。いかがでしょう?」
「おしゃべりが過ぎるのは淑女らしくないが、私にとっては好ましいことだな」
「まぁ」
 淑女とは程遠いと言われているわけだが、逆にそれがここでは功を奏しているようだ。
 曲が途切れたところで、アルベティーナはウォルシュ侯爵に手をとられながらダンスの輪から抜け出した。
「喉、渇かないか?」
 ウォルシュ侯爵が給仕から飲み物を受け取ると、それの一つをアルベティーナへと手渡してきた。参加者が仮面をつけている、ということ以外は普通のパーティと同じようだ。といっても、比較するほどパーティという催し物に参加したことがあるわけではないのだが。
「ありがとうございます」
 彼はアルベティーナがグラスに口をつけるのをじっと見つめていた。もちろん彼女もその視線に気付いたものの、気付かぬふりをして飲む。カッと熱い刺激が喉元を過ぎ去っていく。恐らく顔をしかめてしまったのだろう。そんな彼女の様子を、ウォルシュ侯爵は楽しそうに見ていた。
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