隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「これは、エディト地方の果実から作られたお酒なのだよ。こう、透き通るような色が綺麗だと思わないか?」
ウォルシュ侯爵がグラスを傾け、その果実酒の色が光の加減によって変わる様を楽しんでいる。
「そうですね」
はにかみながら答えようとしたのに、一瞬、アルベティーナの目の前が真っ白になったような気がした。気が付くと右手首をウォルシュ侯爵に掴まれている。
「少し、酔ったのではないか? 休めるところがあるんだ。案内しよう」
仮面の下に隠れているウォルシュ侯爵の目が怖いと思った。見えたわけでもないのに危険だとアルベティーナの心が騒いでいる。いつの間にかもう一人男が増え、アルベティーナは両脇を男たちに抱えられるようにしながら大広間を出ていくことになった。
拒みたいのに拒めないのは、身体に力が入らないからだ。急に全身が重くなったような気がした。いや、気がしたのではなく事実。今だって、このように男性二人に支えてもらわなければ、まともに歩くことができないのだから。
やはりあの飲み物に何かが仕込まれていたようだ。顔も動かすことができないが、視線だけは動かすことはでき、しっかりと周囲を見回すこともできた。だが残念なことにルドルフの姿が見えない。囮であることは知っていたが、ここまで囮になるとは思ってもいなかった。
ウォルシュ侯爵がグラスを傾け、その果実酒の色が光の加減によって変わる様を楽しんでいる。
「そうですね」
はにかみながら答えようとしたのに、一瞬、アルベティーナの目の前が真っ白になったような気がした。気が付くと右手首をウォルシュ侯爵に掴まれている。
「少し、酔ったのではないか? 休めるところがあるんだ。案内しよう」
仮面の下に隠れているウォルシュ侯爵の目が怖いと思った。見えたわけでもないのに危険だとアルベティーナの心が騒いでいる。いつの間にかもう一人男が増え、アルベティーナは両脇を男たちに抱えられるようにしながら大広間を出ていくことになった。
拒みたいのに拒めないのは、身体に力が入らないからだ。急に全身が重くなったような気がした。いや、気がしたのではなく事実。今だって、このように男性二人に支えてもらわなければ、まともに歩くことができないのだから。
やはりあの飲み物に何かが仕込まれていたようだ。顔も動かすことができないが、視線だけは動かすことはでき、しっかりと周囲を見回すこともできた。だが残念なことにルドルフの姿が見えない。囮であることは知っていたが、ここまで囮になるとは思ってもいなかった。