隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 そんな彼女をルドルフは目を細めて見下ろしてくる。
「起き上がることはできるか?」
「む、むり……、です」
 熱い息と共に少しだけ言葉も吐く。とにかく全身が熱い。できることなら、今すぐこのドレスを脱いで、身体の熱を奪い去って欲しい。
「何か、飲んだのか?」
 冷静に言葉を投げかけてくる目の前のこの男ですら、憎いと思ってしまう。なぜ自分だけがこのような熱に浮かされなければならないのか、と。
「お、さけ……、うぉる、しゅ、こうしゃく、から……」
 ルドルフが顔を歪ませたのは、何故なだろう。
「少し、待っていろ」
(いかないで……)
 だが、残念なことにアルベティーナのその気持ちは彼には届かない。バンという扉の閉まる音が、彼女の心をさらに虚しくさせた。
 熱い、熱い、熱い――。
 身体が熱いのはどうしてか。それに先ほどから身体の奥が疼き始めている。何かを欲しているのに、その何かがわからない。一人ではそれが叶わないことだけはわかっているというのに。
 部屋の外が慌ただしかった。それは先ほどからずっとだ。
 ルドルフが、騎士団が突入したと言っていたから、恐らくこの裏社交界の関係者たちを捕まえているのだろう。他にも自分のように部屋に連れていかれた女性はいたのだろうか。
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