隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「ティーナ。何を言っている。また騎士になって一か月だろ? これから警備隊として、これからばんばん仕事をこなしてもらわなきゃいけないのに。まさかこれに怖気づいて、領地に戻るとか言い出さないよな?」
 セヴェリが心配そうにアルベティーナの顔を見た。
「言いませんよ。むしろ、その任務が終わって、用済みと言われるのかと思っていたのですが」
「ティーナ。安心しなさい。警備隊で用済みと言われたなら、近衛騎士隊で拾ってやるから。やはりまだ女性騎士は不足しているからね」
「兄上。まだまだティーナは近衛隊には渡しませんよ。警備隊だって女性騎士が不足しているんです。近衛ばかり女性騎士を持っていって、こちらにはティーナ一人だけじゃないですか。そっちは四人もいる。もう一人くらい警備隊に回してください」
「何を言っているセヴェリ。こちらも四人では足りないくらいなんだ。本来であればティーナだって近衛に欲しかった。それを団長が無理矢理警備隊に回したんだよ。ティーナは他の女性騎士の三倍の働きはする。当分の間、警備隊はティーナ一人で我慢をしなさい」
 エルッキが子供を宥めるような口調でセヴェリを説得させていたため、それを聞いていたアルベティーナは思わず顔を綻ばせてしまった。
 先に朝食を終えたエルッキが席を立つと、慌ただしく屋敷を出ていった。今日は遅番だったはずなのに、急遽呼び出されたとのこと。
「セヴェリお兄さま……」
 アルベティーナが屋敷を出るまでにはもう少し時間がある。
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