サキュバスの年の差@純愛物語 イリスとシオン・魔法の恋の行方・シリーズ8
イリスのねぐらは、
魔族領の中心地、繁華街を少しはずれた場所の共同住宅にあった。
部屋は、たくさんの服と、たばこの吸い殻、雑誌で乱雑に散らばり、床には化粧品や酒瓶が転がっている。
ただ寝るだけに帰る場所・・だった。
「この上だから・・・・
今日は、ありがとうございます」
玄関脇で、イリスは、オトナ対応でしっかり頭を下げた。
「今日の服は、アクア殿に渡してもらえば大丈夫です。
あと、これを」
シオンは、ケーキの小さな箱を渡してから
「それから、もう神殿には来ないでください。
繭や絹の話は、何度来られても、
答えは同じですから」
シオンは、いつものように表情を変えず、淡々と言った。
「それでは、失礼します」
軽く帽子に手をやり、背中をむけて、足早に歩いて行く。
少し先に空き地があるから、そこから飛ぶのだろう。
ああ・・・
イリスの首にある花が、みるみる枯れていく。
イリスは、ウサギの入ったかごを胸に抱いて、
泣きそうな声でつぶやいた。
「パパ、おいて行かないでよ・・」
その後、部屋に戻ったイリスは、
浴びるように酒を飲み、ベッドで泥のように眠った。