十二歳の恋人
―疑いと真実―
昨日は、会えなかったから、今日はいつもより、早く会いたい。
でも、よく考えたら、慧琉は奏斗の携帯番号も、知らない。
会うのは、勉強の日だけ…。付き合ってるっていうのかな?

彼女なんだよね?
不安な気持ちだよ。


「CD買いに行きたいから、慧琉ついてきて―」
「うん…いいよ。」

優奈とセンター街に向かって歩いてたら、
奏斗に似た後ろ姿を見つけた。

でも、違うか…
隣に女の人が一緒だし。



「ね…優奈、ごめん。先に行ってて! 」

「ちょっ…慧琉どーしたの?」


優奈の声が耳から消えた。
もしかして、まさか、その葛藤だった。

奏斗なわけがない。
だって、付き合ってるんだもん。

必死に、いいように考えたけど…

やっぱり気になる。


走って、その人の前に立った。

「ハァハァ……」

「――慧琉ちゃん!」

ビンゴ


「何で?」

気まずそうな顔したりしないでよ。

「何でそんな事できるの?」

「違うから」

何で冷静に答えられるの
隣の女の人も、何クスクスしてるの

慧琉が子供だから?
相手にしてないみたいな態度して、
慧琉が、彼女なんだから。
心の中で、叫んでるのに…言葉にできない。
できなくて、その場から走って走って…


どーして?追いかけてきてくれないんだよー!!
普通は、来るじゃん。


馬鹿馬鹿馬鹿

バカだよ。
慧琉は、意気地なしだよ。
根性無し…




いっぱいいっぱい、泣いた。
部屋から漏れる位の声で。

「何があったか分からないけど、大丈夫?」

お母さん


温かい手で、慧琉の涙を拭ってくれた。


「話、聞こうか?」

頭を横にブンブン振った。
だって話できないよ‥‥
「自分で、解決できるのね?」

小さく頷いた。
「もう、大丈夫だから。――ありがとう。」

無理に笑顔を作って見せた。

お母さんは、頭をヨシヨシして、部屋から出て行った。
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