十二歳の恋人
その日は、来る日だった。
どんな顔して、会えばいい?


「慧琉?先生きたから…」
お母さんの肩ごしに、先生の顔が見えた。
いつもと、変わらない顔してる。

「じゃ、先生お願いします。」

「はい!」

大っ嫌い。
大好きだけど、今は嫌い。

「―――あのさ、今日のは慧琉ちゃんが思ってるような事じゃないから。」

「誰?あのきれいな人」

「幼なじみ。」

「嘘。」

「嘘じゃない。」
「どーして、2人きりでいたの?!」
余裕な顔で話さないで
慧琉だけ、悲しい気持ちは嫌だよ。


「この前、亡くなった友達の彼女なんだよ。幼なじみだし、気になって元気づけようと思っただけだから」

「やだ!」

「俺は大人だから、慧琉ちゃんが想像してる俺だけじゃないんだ。」

ムッとした顔して
怒ってる?

「もーい、わかった。だけど、慧琉だけが彼女なんだよね!?―――慧琉のこと、好き?まだ言われたことないから。」

「――好きだよ。」


そう言って、ギュッと抱きしめてくれた。
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