十二歳の恋人
「行ってきまーす」

「行ってらっしゃい!!」
いつものように、玄関先までお見送りしてくれて、なんだか心が痛い。



「おはよー。凛ちゃん」
「おはよー。」

「国語の本忘れたから、一緒に見せて〜」

「うん、この前は凛が忘れて見せてもらったよね。」

「本当だ〜交代だね」



「おぃ!小牧お前ちょっと」

慧琉の名字は、小牧
慧琉を呼んだのは、同じクラスの男子。

「何?」
「こっち!」

手を拱いている方へついていった。

「どこまで行くの」

渡り廊下を曲がった、死角な場所

「何?」

急に、男子がもぞもぞしだした。
「あのさ―――。俺、小牧の事が……好きなんだけど。」
え.え???
これって告られてる

「お前は、……誰か好きな奴いるのか? 」
こんなこと、予想もしてなかったから…
なんて答えたらいいの

「えっと、―――ごめん」
無言だよ。
傷つけちゃったかな。



「わかった。」

そう言い残して、走っていっちゃった。
一人取り残されちゃった


とぼとぼと教室へもどると、男子は普通に他の男子達と何やら話して笑っていた。

少しホッとした。



「慧琉、田辺に告られたって本当?さっき話してたのきいたんだけど。振られたって!」

「うん……。」

気まずい。

慧琉だけかな――。
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