十二歳の恋人
その後を、追うように慧琉もリビングへ行った。


目の前に、見覚えのある後ろ姿があった。



奏斗―――。

「どうして――。」

声に反応して、奏斗が振り向いた。
そして、静かに席をたった。

「久しぶり。」

本当に久しぶりだった。優しい声

優しい笑顔



「元気だったか?」

何故だか、奏斗の顔みたら、胸がキューっと縛られたような感覚になって、涙が溢れ、声にならない返事をした。


「学校、ずっと休んでいたんだって?」

「だって――。」
「ごめん、泣かないでくれよーー。」

「逢いたかった。すごくすごく。」
「……俺も、ずーっと、慧琉ちゃんの事思ってた。」
奏斗も?!
「でも、どうしているの? 」

「電話を貰って、慧琉ちゃんに会ってあげて欲しいって。お母さんから」

お母さんが?!
あれだけ反対して、怒っていたのに、何故?

「あなたに、あんなに唐突に元気無くなられたら、こうするしかないでしょ。お母さんは、あなたが大切だから、あなたにいつも笑顔でいて欲しい。いつも幸せだと感じていて欲しかったの。
でも、お母さんじゃ……役不足みたい。」

「お母さん。…ごめんなさい。」

また、涙がボロボロと頬を流れた。

「だからといって、お付き合いを許した訳じゃないわよ。」

すると、奏斗が口を開いた。

「今まで通り、俺が勉強を見る事を許してくれたんだ。その代わり、学校には行く事。それが条件だけど。」

「本当に?お母さん?!」

優しい表情で、お母さんが頷いた。
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