セカンドバージン争奪戦~当事者は私ですけど?


予定通り週末に引っ越しを完了させて、週明けに総務へ住所変更を届け出た。

それからvirtual trial試行のミーティングに参加する。参加メンバーはうちの部署の5人とDiamanteの企画広報部課長、富田さんの6人だ。

まずは富田さんにホームページからvirtual trialに進んでもらって試着をしてもらう。富田さんは中学生のお子さんがおられるママさんで、自分の手をtrial画面の手と見比べながら

「この手とこの手を合わせるとか、出来ればいいと思わない?私、色はこっちで節の感じがこっちなのよね。まあ、色は分かるから今日は形でこれを選んで…誕生石のペリドットのリングを探そうかな。ちょっと存在感のあるこれを…trialっていうところクリックだよね?」
「はい」
「ここは普通に‘試着’って表記の方が分かりやすいんじゃない?」

感じたことは、その都度細かく言いながらtrialを押した。

「「「あっ…ぁぁ…」」」

思わず声が出たのは、ほんの一瞬指が切断されたように見えたからだ。だが、その後は

「「「ぅおお」」」

と感嘆の声が出る。リングが浮かずに、きちんと指に通っているではないか。

「いい出来映えね」
「フィットしてますね」
「桐谷くんの技術よ、うん…いいわ。あの、一瞬は…うーん…」
「指がちょんぎれましたけど、瞬きしていると分からないくらいですね」
「クリック後、瞬きしてくださいって注意書きをする?」

なかなかの出来映えに笑い声が上がり、冗談が飛び出すほど和やかだけど、ヨウは何かを考えているようだった。
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