遠くから眺めるだけだった推しが溺愛してくるのですが、これは夢ですか?
***
「...で、メチャクチャ面白かったんだよ!」
「マジでそんな事リアルに起こんの!?」
「やっぱ、海斗もそう思うよな!?」
あの後からは特に何もなく、雑談をしながら三人で教室に入った。
「楽しそうだったね。何の話してたのぉ?」
俺が席に着くや否や、隣の真野が話しかけてきた。
にこにこしながら俺を見る真野。明るめの色で塗られたネイルが目に付く。
「くだらない話だよ」
「ふーん?そうなんだ?」
もうこれ以上は話したくないという意思表示も兼ねて、俺は寝るふりをした。
…真野はきっと悪い奴ではないんだろうとは思う。
だけど、部活がある放課後にいきなり遊びに行こうと誘ってきたり、急にお菓子を作ってきては食べさせられたり、更には俺にべたべた触ってきたりするのは正直鬱陶しい。こっちには好意など微塵もないしな。
挙句の果ては席替えの度に俺の席を聞いてきて、必ず隣に座ってくる。
以前他の人の隣に座ることを提案したら、教室の中なのにも関わらず泣き出した。あの時は本当に焦った。
その一件以来から俺の中で真野は若干面倒くさい人という印象になっている。