遠くから眺めるだけだった推しが溺愛してくるのですが、これは夢ですか?
寝顔を見ていたら安堵と共に、猛烈な羞恥心が湧き上がってきた。


え...俺、走ってるときは心配でどうにかなりそうだったけど、瀬川さんのこと抱きかかえちゃったんだよな...お姫様抱っこ状態で。


うわあやばい!目が覚めたらどんな顔で会えばいいんだよ!?


恥ずかしさで悶えていると先生と瀬川さんの話し声がカーテン越しに聞こえてきた。


ジャッとカーテンを開けて中から瀬川さんが出てくる。


「え…東くん?何でここにいるの…?」


驚いた表情で俺を見つめる瀬川さん。


「いや、俺が話しかけた途端倒れちゃったから…」


何から言えばいいか考えあぐねている間に、保健室の先生はそそくさと出ていってしまった。


…保健室に落ちる沈黙。


普段ならこういう時何気ない会話ができるのだが、今日に限って思い浮かぶものがない。
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