遠くから眺めるだけだった推しが溺愛してくるのですが、これは夢ですか?






バタン


屋上の扉が重々しい音を立てて閉まる。


秋といえども日差しがあり少し暑いためか、誰もいなかった。


…屋上に来るまでの間、来てからも手はつながれたままだけど東くんは一言もしゃべらない。


表情も硬いし…まさかオタバレ?


やばい。それは非常にまずい。


東くんは願わずとも毎日告白されるので、女子に辟易しているというのが東ファンの共通認識だ。


つまり、女友達ならオッケーでも自分を恋愛対象として見てくる女子とは関わりたくないというのが東くんの考え。


こんなオタクが隣なんて東くんにとっては最悪である。言ってて悲しくなるけど。


『俺の名前を気安く呼ぶんじゃねえ』とか『オタクが隣に座んな』とか言われたらどうしよう!?


でもそんなツンツンしてる俺様系の東くんも良いいい!!


「と、とりあえず日陰に行かない?」


心の中では東くんギャップ萌え誕生祭を開催しながらも、気まずい空気を破ってみる。
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