俺様男子はお気に入りを離さない
「――んなっ!」
ガタガタガタガタッ
飛び上がらんばかりの勢いで私は御堂くんから離れる。
イスが盛大な音を立てて床に転がった。
「な、な、な、な、なにするのー!」
「なにって、キスしただけだろ?」
真っ赤な顔の私とは対照的に涼しい顔をしてけろっとしている御堂くん。
なんで、なんでそんなに冷静でいられるの?
「動揺しすぎじゃん。芋子可愛すぎ」
「――っ!」
「ほら、早く座れって。勉強見てやるから」
楽しそうに笑う御堂くんについていけない。
もう勉強どころではない気がする。
心臓がバックンバックンうるさいんだもん。
「だ、だだだだだだって……」
「はいはい、もうなにもしねーから」
御堂くんはクックと笑いながらイスに座る。
そして私のノートをパラパラと捲り始めた。
「なるほど、芋子は応用問題が苦手なんだな」
「……なんでわかるの?」
「消しゴムのあとがすごい」
「うっ」
「てか、ほら、ここ座れよ。テスト勉強するんだろ」
「……はい」
しぶしぶと私はイスに座り直す。
でもやっぱり御堂くんとの距離が近い気がする。
教室でもこんなに近くにいたことないのに。
ドキドキはするけど、御堂くんが隣にいるのが不思議。
一年間片想いしてきて急にこんな展開になるなんて、去年の私に教えてあげたいくらいだよ。