俺様男子はお気に入りを離さない
「電話、誰から?」
「えっと、親友の菜穂から」
「なほ?」
「一緒のクラスの宮崎菜穂」
「ああ、委員長か」
「……うん」
なんでか胸がズキッとした。
だって御堂くん、私のことは顔すら知らなかったのに菜穂のことはちゃんと認識しているんだもん。
「で、なんて?」
「そろそろ帰るから昇降口で待ち合わせねって」
「宮崎はどこにいるんだ?」
「文芸部だから図書館で勉強してたみたい」
「図書館にはいくなよ」
「どうして?」
「芋子は俺と勉強すればいい。俺が教えてやるよ」
ああ、どうしてこの人は。
そんなことがさらっと言えちゃうんだろう。
菜穂とは親友だけど、別に馴れ合っているわけじゃない。
お互いパーソナルスペースを大切にしていて、基本ひとりで行動している。
だけどいつも私のことを気遣ってくれる大切な友人。
「菜穂とはいつも別々で勉強してるの。一緒にいるとしゃべっちゃうし、お互い一人の方が捗るっていうか……」
「ふーん、ならいい。芋子は美術室で勉強してたらいい」
「う、うん」
命令……のような口調なのに、なぜだかそう言ってくれることが嬉しかった。
どうして御堂くんが毎日ここに来ているのか、それはきっと親衛隊や取り巻きから逃げるためだと思うんだけど、そのおかげで御堂くんと一緒に過ごす時間が増えて私は役得だ。
放課後の美術室なんて部活以外誰も寄り付かないもの。
格好の逃げ場だよね。