俺様男子はお気に入りを離さない

私は教科書やノートをカバンにしまう。

「私はもう行くけど、御堂くんはどうする? まだいるなら鍵を――」

「俺も帰る。芋子がいないのにいても仕方ないだろう?」

御堂くんは立ち上がるとつかつかと出入口まで歩いて行った。
私は美術室の戸締りを確認して最後に鍵をかける。
職員室へ鍵を返しに行く間も隣には御堂くん。
廊下を一緒に歩くということが貴重すぎて緊張した。

そろりと御堂くんを見れば、私からは少し見上げるくらいの背の高さ。
窓から差し込む夕日が御堂くんを照らしてキラキラと輝いているように見える。

「芋子、また俺に見とれてる」

「見とれてないっ」

すぐにプイっと前を向くけれど、頬に熱が集まってきているのがわかる。
隣の御堂くんはクックッと小さく笑う。
恥ずかしいけれどなんだかくすぐったくて、私も少し笑った。

鍵を返して職員室を出ると、ポンっと頭の上に手がのせられる。

「じゃあな、芋子。気をつけて帰れよ」

爽やかな笑顔を残して、御堂くんは颯爽と去っていった。

私はその後を追うように、だけどちょっと距離は開けて昇降口に向かう。
テスト期間中だから校内に残っている生徒は少ない。
だけどいつ誰に見られるかもわからないから、御堂くんと一緒にいないほうがいい。
もし見られてしまったら「抜け駆け」だなどとあらぬ疑いをかけられてしまうからだ。
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