俺様男子はお気に入りを離さない
昇降口に行けば菜穂の方が先に待っていた。
「菜穂、お待たせ」
「ううん、私も今来たところ」
私たちは小学校から一緒の幼なじみ。
高校は別れてしまうかもと思っていたけど、蓋を開けてみれば同じ高校に受かって一緒に通うことになった。
菜穂は、人見知りで引っ込み思案な私とは対照的にサバサバとしていてコミュ力も高い。
事あるごとに私を引っ張ってくれる本当に心強い親友。
一年の時は別のクラスだったけど、今年は同じクラスになれて嬉しい。
「図書館で勉強捗った?」
「まあ、それなりに。家でやるよりは捗るね~」
「私も。家だとムダに掃除始めちゃったりして」
「うん、わかる。やっぱり学校でやるに限るね」
そんなたわいもない話をしながら駅まで歩いていると「ところでさ」と菜穂が難しい顔をした。
「……もしかして今日御堂くんと一緒だった?」
「えっ!!!!!」
一緒だったけど、それを菜穂に言うのは憚られる。
いくら親友でも、だ。
けれど菜穂は「千花子ってわかりやすい」と言ってケタケタ笑い出した。
「いや、えっと、そのっ……」
どう弁明したものかとぐるぐる頭を回してみるも、余計に焦って顔は火照るばかり。
「な、内緒にしてて」
「なんで隠す? 別にいいじゃん」
「だって御堂くんと一緒にいたなんてバレたら世の中の女子の反感をくらうよ……」
「ふーん、そういうもの? たかがクラスメートなのに」
「な、菜穂は御堂くんに興味がないからそう思うんだよ。御堂くんの親衛隊とか取り巻きとか、すごいんだから」
現に上級生のお姉様方に追いかけられているのを匿ったんだから。
それくらい、御堂くんは人気があるのに菜穂はまったく興味がない。