俺様男子はお気に入りを離さない
「確かにキャーキャー煩い気がするけど、私が御堂くんと一緒にいても誰も何も言わないわよ?」
変なの、と菜穂は首を傾げる。
いやそれよりも、ドクンと心臓が変な音を立てた気がした。
最近放課後は御堂くんと過ごすことが増えたからだろうか、御堂くんが自分以外と一緒にいることを想像できなくなっている。
何を血迷っているんだ、私。
御堂くんは私に会いに来ているんじゃなくて、逃げ隠れするために美術室に来ているだけなんだから。
「……菜穂、御堂くんと一緒にいたりするの?」
「ん? まあ、よく関わってはいるけど」
「そ、そうなんだ……」
親友のあっけらかんとした答えに、なぜだか私はガッカリとしてしまった。
特別な時間を過ごしているのは私だけじゃないんだと思い知らされたからかもしれない。
「千花子ってもしかして御堂くんのこと好きなの?」
「なっ、ちがっ!」
「あーはいはい、ごめんごめん。わかりやすい回答ありがとう」
菜穂はクスクスと笑う。
私はただただ顔を真っ赤にするだけだ。
「……そんなにわかりやすい?」
「わかりやすいよ。素直でいいじゃん」
「よくないよ……」
だってこの想いは隠しておかなくちゃいけないものなのに。
御堂くんのことが好きだってバレたら、御堂くんのファンに目を付けられてしまう。
だけど菜穂は「いいじゃん」と笑い飛ばす。