俺様男子はお気に入りを離さない

バタバタと廊下が騒がしい。
微かに聞こえてくる「御堂くーん」と彼を呼ぶ声。

「あ、あの、誰か呼んでるんじゃないかな？」

「ここって他に誰か来るのか？」

「……たぶん来ないと思うけど。いつも私だけなので」

「よし、なら俺を匿え。しばらくここで隠れるから」

「えっ？　ええっ？」

「絶対にバラすなよ」

凄みをきかせた声色は首を縦に振ることしかできなくて、私は内心びびりまくる。
御堂くんは作業台の物陰に隠れるように座り、背を預けて目を閉じた。

出入口からは見えない位置だけど、私からはバッチリ見える。

伏せられた目は長い睫毛に縁取られ、鼻筋はすっと通っている。
赤みがかったダークブラウンの髪は地毛なのか染めているのかわからないけれど、艶があってとても綺麗だ。

御堂くん、口は悪いけど本当に整った容姿をしていて、人気があるのも頷ける。

教室の外では相変わらず御堂くんを呼ぶ声。
捜されているっぽいけど、いいのかな？

――『絶対にバラすなよ』

先ほどの言葉が頭の中を反芻した。