俺様男子はお気に入りを離さない
「なんか顔色悪いな?」
「そ、――そんなことないよ」
一歩後ずさればすぐにくっと腕をつかまれた。
じっと覗き込まれると責められている気分になる。
急に動いたからか、ズキリと頭が痛んだ。
思わず顔が歪む。
「芋子?」
「……ちょっと片頭痛がね。気圧に弱いっていうか。今日みたいに変な天気の日とか急に晴れた日とかはよく頭が痛くなるの」
観念して私は吐き出す。
ちょうど頭痛薬を飲もうと思っていたところだったんだ。
机の上に出してあった錠剤を目ざとく見つけた御堂くんは「これか」と手に取った。
ペリッとフィルムを剥がすとにやりと口角を上げる。
「俺が飲ませてやろうか?」
「えっ?」
飲ませるってどうやって?
と思って首を傾げれば、御堂くんは「口移しで」と艶っぽく囁く。
思わず御堂くんの唇を凝視ししながらあらぬ事を想像してしまって、羞恥で顔が赤くなった。
「ほら、口開けろって」
くいっと顎が掴まれる。
ドクンと心臓が響くように鳴った。
「じ、じじじじ自分でできるからっ!」
御堂くんの手から薬を引っ掴むように奪うと、私は慌てて錠剤を口に放り込む。
ゴクンと飲むとき僅かな苦みが喉をすり抜けていった。