俺様男子はお気に入りを離さない
御堂くんがボールをパスする。するとすぐに御堂くんへボールが戻ってきた。そのまま一人二人とかわしてシュート。と同時にキャーという歓声。

「すごいじゃん、御堂くん」

「ねっ! すごいよね!」

菜穂と二人盛り上がり、夏の日差しのことをすっかりと忘れていた。
御堂くんの試合が終わった後は頭がくらりとする。
薬を飲んでいるからいくらかましだけど。

「ちょっと日陰行っていい?」

「そうだね、ついでに水分補給しよ」

水場に移動しようと歩きかけたとき――。

「千花子! 危ないっ!」

「えっ?」

直後、顔面に強い衝撃と鋭い痛みが走る。
何が起きたのかわからなかった。

ああ、御堂くんみたいにスポーツが得意なら避けられたのに……なんて余計なことを考える暇はあったらしい。

スローモーションのように景色が回る。
菜穂が「千花子」と呼んでいる気がする。
だけど答えることができない。

そのまま私は倒れてしまった。
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