俺様男子はお気に入りを離さない
目を開けると真っ白い天井が一面に広がっていた。
ぽわんとした気分のまま、私はいったいどこで何をしているんだろうと思う。

「千花子、気がついた?」

「菜穂?」

体を起こせば「ああ、寝てていいから」と肩を押されまたベッドへ逆戻り。妙に視界がぼやけると思っていたら眼鏡がないからで……。

「えっと、私……?」

「ハンドボールが顔面にぶつかって倒れたの。痛くない?」

「あ、うん。大丈夫そう」

鼻を触れば微かにヒリっとする。どうやら私の低い鼻でもボールにぶつかるほどの高さはあったらしい。

「ごめんね、迷惑かけて。暑さでクラクラしてて」

「いいって。それよりすごかったんだから」

「なにが?」

菜穂はニヤニヤと笑う。
私の倒れっぷりがすごかったのだろうか。だとしたらちょっと恥ずかしいけれど。

「保健室まで運んだの誰だと思う?」

「……菜穂が運んでくれた?」

「まさか! 御堂くんよ! 御堂くん!」

「えっ?」

御堂くんって……あの御堂くんのこと、よね?
驚きすぎてガバッと起き上がる。
全然実感はないけど、バックンバックンと心臓が音を立て始めた。
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