俺様男子はお気に入りを離さない
お言葉に甘えてもう一度ベッドに横になる。
まだ頭はふんわりとしている。昨日までぐずついた天気だったのに今日は快晴で、その気圧差にやられてしまったのだと思う。薬は飲んでいたのに、こまめに水分を摂っていなかったためにこんなことになったのだ。それに加えてハンドボールが顔面に飛んでくるなんて。……結構痛かったな。

なんて考えていると、カララと扉の空く音が聞こえた。
カーテンが開いて「菜穂、ありがと」と体を起こした私の目に映ったのは――。

「み、みみみみ、御堂くん!」

「芋子、元気そうだな」

「う、うん」

ギシっとベッドに座る御堂くんは私の頬に手を伸ばす。
柔らかく包みながら「大丈夫か」と覗き込まれた。

その瞳がとても真剣で胸がドキンと高鳴る。
心配を孕んだ声音は私の心を絡みとって離さない。

「うん、大丈夫。御堂くんが運んでくれたって聞いたんだけど……その、ありがとう。重かったよね?」

「いや? それより……」

突然ふわりと体が前のめりになり御堂くんの胸にぽすんと収まる。
背中にまわる腕に驚いていると「心配した」という小さな声が届いた。

ドキンドキンと心臓は張り裂けそうなのに、御堂くんはお構いなしに私の髪を優しく撫でる。
その手つきがとんでもなく甘やかで、その心地よさに無意識に身を委ねた。

「……ありがとう、大丈夫だよ」

「ならよかった」

御堂くんが私を心配してくれていることが嬉しい。
とても贅沢なことだとわかっている。
わかっているからこそ、申し訳ない気持ちで涙が出そうになった。
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