俺様男子はお気に入りを離さない
4.君と見た花火は
親衛隊や取り巻きから目を付けられるかと思っていたけれど、私が御堂くんに運ばれたことよりも、「急病人を介抱する御堂くんはやっぱりかっこいい」という方に焦点が当てられ、ますます御堂くん人気が高まっただけだった。

そのことに私は安堵する。
だって変な目を向けられたら嫌だもの。

すっかり夏の気候に変わり、蝉が鳴き出した。
期末テストが終わったら夏休みだ。

夏休みは嬉しいけれど、御堂くんと会えなくなるのはちょっぴり寂しいような気がする。
だって毎日のように放課後美術室でおしゃべりをしているのだから。

「御堂くんは夏休みどこか行くの?」

「ああ、毎年夏休みは海外で過ごすな」

「えっ、海外? すごい!」

「芋子は?」

「私は特に予定ないけど。夏休み最後の花火大会くらいは行くかな」

毎年夏休み最後の日曜日、市民花火大会が行われる。花火大会会場になる河原の堤防にはたくさんの屋台が並び、お祭りのように賑わうのだ。

「誰と行くんだ?」

「小さい頃は家族と行ってたけど、去年は菜穂と行ったよ。今年はまだ決めてないけど」

「そうか。じゃあ俺と行こう」

「えっ?」

思わず素っ頓狂な声が出た。
耳を疑う。

「み、御堂くんと?」

「そうだけど。嫌なのか?」

「う、ううん」

私は慌てて首を横に振る。
御堂くんから誘われるなんて、そんな奇跡みたいなことある?
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