俺様男子はお気に入りを離さない
「ところで芋子、メガネやめたのか?」

「ああ、うん。コンタクトにかえたの」

球技大会のときにボールが顔面に当たって、そのときメガネも壊れてしまった。新しいメガネは買ったけど、この機会にコンタクトレンズに変えたのだ。

「変、かな?」

「いや。芋子の可愛い顔が皆にバレると困ると思って」

「……へ?」

「自分が可愛いって自覚しろよ」

「か、可愛くなんてないもん」

「そういうとこが可愛いっつってんだよ」

御堂くんは拗ねたようにそっぽを向く。
怒られた口調なのに、胸がザワザワと揺らいだ。

少なくともメガネを外した私の顔を変だとは思っていないみたい。なんか……嬉しいな。

「夏休み、芋子に会えなくてつまんねーな」

「でも花火大会行くんでしょう?」

「それだけで満足なのかよ」

……と言われると答えに詰まる。
花火大会は夏休み最終日。それまで約一ヶ月近く御堂くんに会えないのだ。寂しいに決まっている。
だけどそれを口にする勇気はなかった。

「花火大会、楽しみ。浴衣着ていこうかな?」

「いいんじゃね? 楽しみにしてる」

「うん!」

浴衣は二着持っている。どちらを着ていこうか、今から楽しみだ。
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