俺様男子はお気に入りを離さない
神社に近づくにつれて人が多くなっていく。
花火の打ち上げ場所は河原で、その堤防や近くの神社には屋台やキッチンカーが立ち並んでいた。

「芋子」

ふいに肩を引き寄せられてひゅっと飛び上がるくらい驚いた。でも私を「芋子」なんて呼ぶのは彼しかいない。

「み、御堂くんっ!」

ドキドキしながらその名を呼ぶ。

「よう、久しぶり」

「うん」

少しだけ日に焼けた御堂くんは相変わらずかっこよくて、もう夕日は沈んだというのにキラキラと眩しく見える。

「少し、背伸びた?」

前から御堂くんはモデルみたいに背が高かったけど、今日は一段と目線が高い気がする。私は150センチしかなくて今日は下駄を履いているからほんの少しだけ高くなっているのに、それでも御堂くんの顔が遠い。

「ああ、そうかも」

「いいなぁ。男子は高校生でも伸びるもんね。私はもう全然伸びないよ」

「芋子はそのサイズだからいいんだろ。そのままでいろ」

「うーん、でももう少し、あと五センチくらいほしい。だって高いところのもの取れないのよ」

「そんなもの、俺が全部取ってやるよ」

事もなげに言われるので心臓がきゅっと音を立てた。

「……あ、ありがと」

「じゃあ、行くか」

「うん」

御堂くんと並んで歩く。
屋台がたくさん並び賑やかしい。
毎年花火大会は家族と一緒に訪れるか、家から眺めるだけのことが多かった。
それがまさか御堂くんと一緒に来られる日がくるなんて胸がいっぱいだ。
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