俺様男子はお気に入りを離さない

「これ、あなたよね? 秋山さん?」

と、目の前に差し出された写真を見て一気に血の気が引いた。
そこには御堂くんの隣に並ぶ浴衣の女性、そう私が写っていたからだ。

「こ、これ……」

声が掠れる。
背中に冷たい汗が流れた。

いつの間に撮られたのだろう。
花火大会のときの写真だ。

ううん、撮られたというよりはたまたま映り込んだと言った方が正しいかもしれない。

「あなた、御堂くんと花火大会に行ったの?」

……行った。
……行ったけど。
それを正直に話したらどうなる?

お姉様方の剣幕に恐怖して反射的に首を横に振った。

「た、たまたま、出会って……」

「はあ?」

「ひぃっ」

蛇に睨まれたカエルのように、私は身を小さくして動けない。まるで金縛りにでもあったかのよう。胸が詰まり、息が苦しい。

ジリジリと複数人に詰め寄られ、私は逃げ場を無くした。

「あんたさぁ、わかってんの? 御堂くんはね、みんなの御堂くんなのよ。独り占めしないでくれる?わかったわね?」

「……はい」

私が頷いたのとチャイムが鳴るのは同時だった。

お姉様方はチッと舌打ちして私をひと睨みしてから校舎へと戻っていく。
その後ろ姿をぼんやりと眺めながら、深いため息と共にその場にへたり込んだ。
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