俺様男子はお気に入りを離さない
御堂くんが近い。
触れそうで触れない距離。
御堂くんの息づかいが聞こえてきそう。

急にドキンドキンと心臓が暴れ始めた。

だって、やっぱり、間近で見る御堂くんはとても綺麗で凛々しくてかっこいいんだもの。

足音が遠ざかって、私たちはようやく胸をなで下ろした。

「もう行ったみたいだね――」

立ち上がろうとするが腕を引き寄せられてバランスを崩し、御堂くんの胸にダイブしてしまった。

「うぷっ」

「もう少しここにいろよ」

そのままぎゅうっと抱きしめられ、身動きが取れなくなった。

ドキンドキンと鳴る心臓の音が御堂くんにバレてしまいそう。
離れようともがいたら「嫌なのか?」と悲しそうに呟かれ、そんな風に言われたら嫌だなんて言えなくて……。

むしろ嫌じゃない。
本当はいっぱい御堂くんに触れたい。
だけどそれはダメなんだと戒める自分もいて。

しばしの葛藤の末、私は大人しくそのまま身を任せた。

「……御堂くんっていつも追いかけられて疲れちゃうね」

「だから千花子で癒やされてる」

「私なんかで癒やしになるの?」

「なる」

きっぱりと断言されてしまって返答に困る。
最初に聞いたのは私だけど……。

そんな風に言われて嬉しくないわけがない。だけどそれがまた離れがたくなってしまって困るのだ。
私は御堂くんから離れなくてはいけないのに。
< 49 / 75 >

この作品をシェア

pagetop